第49回社会保障審議会障がい者部会の傍聴報告です。

12月15日(月)開催の「第49回社会保障審議会障がい者部会」の傍聴報告を外部サイトを引用しながら掲載します。
この審議会障がい者部会は、今回が最後で4月から19回の審議会を33名の委員で審議してきて、このたび「障がい者部会報告書」をまとめました。


いつもは、表題のみ貼り付けてリンクをかけていましたが、リンク切れを防ぐために「引用」という形にさせてもらいました。
ということで、かなりの長文になりますので、あしからず…。



まずは、最後の審議会障がい者部会のときの「傍聴メモ」を2つ引用します。


■障害者支援センター ぽけっと(神奈川県)のブログから引用させていただきました。

第49回 社会保障審議会障害者部会 傍聴報告
 12月15日(月)、第49回社会保障審議会障害者部会が開催されました。
部会においては、先回に引き続き、部会報告〜障害者自立支援法施行後3年後の見直しについての検討が行われました。
 部会は、今回が支援法見直しの最終回ということもあり、各委員より、報告書について最終的な意見が述べられました。
 意見としては、「経営実態調査について、サービスが利用できた、利用できないケースについて調査が必要だったのではないか。」、「残された課題として、障害の範囲、所得保障があり、また、利用者負担金、介護保険との統合等対立した意見について、議論を深めることができなかった。」、「当事者中心の視点や、現場の視点を盛り込んだことは評価できるが、実際の運用時に実効性がずれないようする必要がある。また、報告に団体の意見が、どこに反映されているのか分かりにくい。」、「障害者権利条約との関係を明確にすべき。」、「入り口にあたる相談支援を重視するのは必要であるが、肝心の社会資源の整備がより重要と考える。」、「サービス利用計画の作成責任が不明確。」等々の発言が続きました。
 また、特に、「精神病院への長期入院を、社会的入院と明確に記載すべきだ。」との提案について多くの委員の支持があり、省側は、「これまで他の審議会等においても、社会的入院の用語は使用していない。」という答弁に終始し、他の委員から、「社会的な入院という状況がはっきりしているのに、表現として使用しないという説明が何もなされていない。」との指摘もあり、最終的に座長一任で検討という場面もありました。
 最後に、当局より、「この報告は、そのまま厚生労働省の担当部署が受け止め、自治体、団体等から意見を聞きながら、法改正や各種法令の改正までの作業に入る。各委員にあっても国民への理解を念頭において、様々な場面で報告検討を行っていただきたい。議論を通じて、国民的な障害福祉への理解が深められる中で、財源の確保も可能となり、制度の充実につながる。」との挨拶があり、この間行われてきた検討は終了しました。
 
 今回の一連の審議については、今春からの状況説明に始まり、各団体からのヒアリング、そして秋から課題を整理して報告書の作成までこぎ着けましたが、積み残された課題も多く今後の推移にも注目する必要があると考えます。

投稿日 2008/12/16

障害者支援センター ぽけっと
http://yorube.blog.ocn.ne.jp/pocket_network/


佐賀県の「ゴエモンさん」のブログから引用させていただきました。

本日第49回社会保障審議会障害者部会が開催されました。

今回は報告書案のとりまとめで、4月から開催されてきたこの部会も、今回で一区切りとなりました。

今回は報告書についての追加修正の議論というよりも、報告書全体についての感想や、今回の部会での審議内容、
今後の見直しの進め方についての意見や質問をする委員が多くいました。

委員から主に、
・様々な意見は出たが、議論は深まらなかった。
・一歩前進だが、所得保障・障害の範囲など残された課題も多い。本来の目的を達していない。
・この報告書がどのように扱われるか、運用面で反映されるのか。
・報告書の内容が与党PTの「抜本的な見直し」値するものか疑問がある。
介護保険統合の議論は国民の意識を障害者施策に向ける議論をすべき
といった趣旨の発言がありました。

語句の修正では9pの「受け入れ条件が整えば退院可能な長期入院患者」とういう表現を「社会的入院患者」として改めるように委員が発言し、他の委員も賛成の意を表しましたが、厚労省事務局はこれを頑なに拒み、最終的に部会長と事務局が調整することになっています。
社会的入院という表現を拒むことは、この問題に対して、行政の責任を逃れたい姿勢が見え透いているように思います。

今日の議論を含め若干の文言修正を加え、近日中に報告書が出されます。

厚労省側の説明では、今後この報告書を元に厚労省は法律改正事項に関しては来年の通常国会に提出すべく作業をすすめます。
その他運用面での政令、省令、通知などは今後も関係団体と調整を続け、具体案をつくっていくとのことです。

前回の部会の報告でも書きましたが、今回の報告書は甚だ不十分な内容です。
法成立時の附則や付帯決議にあげられた検討事項、例えば障害の範囲、所得保障に関してはほとんど議論がないまま、先送りにされて、3年前から全く進んでいません。
課題になっている事項について、運用面での見直し、規制緩和や対象拡大にとどまっていて、法律の大きな枠組みや制度を大きく変更していくものはほとんど見あたらず、当初いわれていたまた与党のいう抜本的見直しにはほど遠いものです。
部会の各委員は最後の回ということもあり、自画自賛をしている意見もありましたが、到底納得できるものではありませんし、この部会の意義や存在価値に疑問を持たざるを得ません。

また、今後の制度改正についても厚労省のフリーハンドとならないように、不十分ではあるが、少なくともここに書かれていることをがどのように具体化されていくか、3pの基本視点に書かれているように、当事者中心に制度変更がされていくのか注視する必要があると思います。

2008-12-16 01:48:21 障がい者の自立

ゴエモンのつぶやき 
http://blog.goo.ne.jp/goemon-1555

続いて、これに関連してWeb新聞を3つ引用します。

障害者自立支援法:見直し 応益負担触れず、社保審部会了承
 社会保障審議会障害者部会は15日、障害者自立支援法の施行後初の見直し(09年度)に関する報告書をまとめた。厚生労働省が10日に示した原案をおおむね容認する内容。利用者負担については、障害者がサービス料の1割を原則自己負担する応益負担の見直しには触れず、負担軽減措置の継続を求める原案をほぼ了承した。

 応益負担は、障害が重いほど負担が大きいことなどから批判が強いが、負担軽減措置で平均的負担は約3%になっている。報告書は、問題点を指摘する意見と軽減措置がある現状に肯定的な説明を併記した。

 障害者が働く事業所の全国組織「きょうされん」は、報告書の原案段階で応益負担を基本としたことに「障害自己責任論という誤った考え方を残し、断じて認められない」と批判した。【佐藤浩

毎日新聞 2008年12月16日 東京朝刊

■障害者団体、1割自己負担継続に失望 社保審自立支援法見直し
 障害者自立支援法の施行3年後の見直しを進めている厚生労働省社会保障審議会障害者部会は15日、福祉サービス料の利用者1割負担を現行のまま維持すべきだとの報告をまとめた。軽減措置で実質的な負担が抑えられていることが理由だが、抜本的な見直しを求めていた障害者団体の間には失望が広がった。

 報告を受けて厚労省は次期通常国会に同法改正案を提出する方針だが、与党内にも1割負担を撤廃して軽減措置を恒久化すべきだとの声があり、調整が続いている。

日経ネット 2008年12月16日 (07:00)

■応益負担を堅持 社保審部会が報告書了承
社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の障害者部会は十五日、障害者自立支援法の施行三年後の見直しに関する報告書を大筋で了承しました。政府は報告書をふまえ、同法改正案を次期国会に提出します。

 報告書では、障害者・家族に重い負担となってのしかかっている「応益負担」(利用した福祉やサービスの原則一割を利用者が負担)の考えを堅持する立場を改めて示すものになりました。

 これまでの議論では、委員から「応益負担」についての反対意見が出されましたが、報告書では、「負担軽減措置」で、実質的に「応能負担」になっていることを強調しました。いくら軽減措置をとっているといってもあくまで期限付きの「特例」で、原則一割の負担を強いる制度の根幹は変えないというものです。

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解説

届かない現場の声
 自立支援法の見直しについての厚労省の報告書を了承した十五日の社会保障審議会・障害者部会では、「議論が不十分」「現場の声が反映されただろうか」との声が相次ぎました。
 「(法施行で)現場では大変な状況に陥っているが、議論されてこなかった」(小板孫次・日本知的障害者福祉協会会長)

「(さまざまな課題が)議論にはならなかったというのが率直な意見だ」(安藤豊喜・全日本聾唖<ろうあ>連盟理事長)

「所得保障、利用者負担への対策がない。ここも(議論が)不十分だ」(副島宏克・全日本手をつなぐ育成会理事長)

 事業所の収入減の要因となっている「日払い」方式や、「障害程度区分」についても議論が必要だった、との声も出されました。

 今年四月からの見直しの議論の過程では、厚労省は国民からの意見も公募(七百九十七件の意見)したほか、障害者関係団体のヒアリング(二十六団体)も実施されました。これだけ広範な人たちの意見を聞きながら、報告書は「最初に結論ありき」というものに終始しました。

 今後、政府は自立支援法の改正法案の検討に入りますが、「応益負担」の撤廃をはじめ、報告書の枠組みにとらわれない抜本的な見直しが問われています。(鎌塚由美)

2008年12月16日(火)「しんぶん赤旗

終わりに、「報告書」を厚生労働省のホームページからリンクします。
障害者自立支援法施行後3年の見直しについて
社会保障審議会障害者部会報告書)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/12/s1216-5.html



みなさん、どのような感想をもちましたか。

最後に「報告書」をもってきましたが、書き始めは最初にこの報告書をもってきました。
でも、傍聴報告やら各新聞社の記事を読んでからのほうが厚労省の理不尽さが理解してもらえるかと思い、書きながら変更をしました。


何回も書き込んでいますが、「結論ありきの審議」であった印象があります。
冒頭に書いたように19回もの審議会を開催し、多忙な33名もの委員を徴集し、数多くのパブリックコメントを求め、さらには数多くの障がい者団体からの意見陳述をさせて、いままでの議論は何だったんでしょうか。

国民無視の取り扱いをしているようにしか思えません。



皆さんの周りの人たちとこの議論をして、今後の動向を注視していきましょう。



また、全国の障がい者の中にはこの関係で訴訟を起こしている人たちもいますので、機会がありましたならば温かい後押しができるよう心がけておきましょう。

障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会
http://www.normanet.ne.jp/~ictjd/suit/index.html